まぁうんちほど強烈な匂いも無いしおしっこ健康法なぞといって、飲む人達もそれなりに変態に見られるわけではないというわけで、まぁそんなに注目されることは無いおしっこでは有るが、日々付き合っているとなかなかに自己主張をすることがある。

 色と匂いの変化は、うんちほどではないがやはり、有る。

 匂いに関しては、まぁ酒を飲みすぎた後に代の奥様方大顰蹙の臭さになるのはよく知られたところである。あの甘ったるいアセトアルデヒド故か、あるいはそれ以前にアルコールそのものによるのか、とにかく飲んだ次の朝の最初の一発は臭い。いや、もしかすると前の晩、飲んでいる最中から臭いのかもしれないが、酔っ払っちまったら検証のしようがねぇわな・・

 あと、特徴的なものとしては糖尿病の患者のおしっこである。

 これは病気ゆえいたしかた無いがとにかく甘酸っぱい・・という話である。が、結構長く生きている気がする割りには明示的にその匂いを嗅がせていただいていない・・これは不幸と言うべきか、幸福と言うべきか・・それすら分からないということ自体幸福なのであろうか・・

 しっこもまた発酵が進むのか含有成分の析出によるのか、小便器も掃除しない期間が長くなると特有の匂いがし出す。いくら洗っても匂いがするという場合は、一つにはトラップの汚れ、もう一つには配水管自体の汚れという原因が考えられる。10年も使っている配水管は、小便中に析出してくるカルシウム分が蓚酸などと結合して不溶性塩となって管壁に頑固に付着する。これはもはや単なる酸洗いとかでは除去できず、専門の業者に処理してもらうか管自体を交換するか、諦めるかということになる。掃除が下手なだけというのは・・・あったりする・・

 あと、立ちしょんべんの名所は独特の匂いと、ある種の苔のようなものが好むのか緑色に着色し、一種独特のムードを醸し出す。これがまた酔っぱらいを呼ぶのかどこか人間の根源に、そうしたものに引かれる習性が隠されているのか更なる立ちしょんべんを生むこととなる。

 さて、健康なしょんべんはうす山吹色乃至はそれから無色に近い色との間になる。大量に清涼飲料水を飲み続けたときや、言うまでもないがビールを飲みすぎたときの、連続トイレ症候群のときなどは、無色に近くなる。これはまぁ当然で、腎臓から瀘し出される着色成分の単位時間当たり総量が一定であれば水分量が増えた分だけ薄くなるのは当然である。

 さて、この山吹色であるが、諸般の事情で薬品摂取が有った場合はむしろレモン色に近い色になる。これは典型的な薬物尿であるがなぜ黄色であるのかが疑問である。緑とかショッキングピンクとか、インディゴブルーとかがあれば、如何にも薬物という感じですごいと思ってしまうのだが・・もっともこの色を楽しむために薬中になる人間が増えたら大変であるが・・

 山吹色より赤に近い色が混じる様なら、血尿を疑う必要が出てくる。血尿自体いろんな要因で出るので、必ずしも医者にかけ込む必要は無いが、まずい病気のことも多い。重い病気のことを私が話してもまずいだろう。専門家に任せるが、非常にあほ臭い理由で血を見ることというのは有る。

 これは私自身の体験であるので、当然のことながら女性のことは書けない・・いつか資料提供してくれる方が有ったらお願いしたいものである。

 男性の場合、小便に用いる器官は身も蓋も無いことに男性器そのものである。

 さて、詳細にこれを観察すると放水ノズル部分は実に唇に似ていることに気がつくであろう。(形であって大きさではないぞ!当然!)

 前日、加水分解を肝臓に要求する様な食生活をした場合、あるいは射精を伴う性行為あるいはそれに準じた行為をした場合、尿道粘膜の粘性が非常に高くなる場合がある。まぁ端的に言うと尿道がくっついてしまうのである。この状態は自意識に上ってくるわけではないので、朝、トイレに行くまでまったく自覚されないままとなる。

 あの独特の解放感に浸るべく放尿行為に至ろうとした瞬間(というほど男性の場合は短い時間ではない。その長い尿道をしっこが移動して来るのはよく自覚できる。)、予感が走る。つまり、尿道粘膜をしっこが引き剥がしつつ移動してくるのが分かるのだ。さて、男性器の陰茎と呼ばれる器官の中ほどには、ある種過敏且つ管路抵抗の変化する部分があるらしく、そこにしっこが至った場合、めりめりと粘膜が引き剥がされ著しい疼痛を味わうことになる。そして大量放水中は気がつかないが、仕上げの館内残留物の絞り出し作業時に、明確に出血と何処の粘膜がいかれたのか、の確認をその痛みとともに出来ることになる。

 かように過酷且つ悲喜劇を伴った事例ばかりでなく、男子の場合にはいま少し、排尿時の苦労を味わわさせられる場合がある。

 川柳に「朝立ちやしょんべんまでの命かな」という、じつに中高年男性の悲哀を滲ませた作品があるが、元気過ぎる朝立ちというのもまた、実際の排尿時には大変な事態を引き起こす。

 そもそも男性用小便器に限らず便器というものはある程度角度があるにせよ、「ブツは落下してくるもの!」という大前提で設計される。まさか如何に研究熱心な研究者であれ、上昇する排泄物を相手に製品設計は出来んだろう。この大前提を覆すような事態が実は健康な男性の場合しばしば起こる。

 通常朝立ちと呼ばれる現象は、別に性的な現象というわけではなく、多くは膀胱の膨満感の副産物として引き起こされる。若い健康な男子の場合勃起時の上向角はほとんど腹部に付きそうなほどであり、この状態で排尿を済ませなければ朝立ち自体は治まらないのである。ここに一つのジレンマがある。

 男性の排尿器官の構造的特徴として、尿道部分が平時には体に向く側、勃起時には体から遠い側、つまり通称裏側と呼ぶ側に沿って配されていることである。この尿道は言ってみればビニールホースのようなもので、強く折り曲げると屈曲部を生じ、非常に水と言えど通り抜け出来難い状態になる。これは各自ビニールホースを使って試されるなり男性の場合はご自身の物で検証されたい。(注!後は知らんぞ!)

 何を言いたいかというと、勃起時に無理に便器に納めるべく下を向かせようとすると、それ自体が非常な苦痛を伴うばかりか、先の現象が発生し、屈曲部を通過する尿によって、激痛を味わうはめになるのである。

 さてこうなると、取れる手段はいくらも無い。下に向けると痛いし上を向いたままでは便器をはるかに通り越して壁面にまで到達し、さらにそのリバウンドが我が身に降りかかること必定。で、孤独な闘争者は考える。

 対ボディ角度を変化させることなく砲心の角度を実質下に向けるか、出始めたら地球重力にしたがって放物線を描くその先がちょうど便器となるように離れるか・・2者択一式問題となる。

 便器から離れる作戦は実際に検証するといくつかの問題を孕んでいる。

 まず砲心が上を向いたままということは出始めとかの勢いの弱い段階、あるいは終末時、あるいは先般述べた唇の機嫌が悪いときには尻まわりと通称呼ぶ現象、つまり砲心に沿ってたれてしまう現象が起こる場合があること。これは、それをコントロールすべく支えている手の指に被害が及ぶこととなり、えらいことである。そしてなにより、最後の絞り切りに近い状態で間欠泉的に排出しているときにはコントロールを失ってしまうことも問題である。

 そこで、第1の方法しか選択肢は無くなってしまうのだ。この方法とは、便器上の壁面に左手(いや別にどちらでもかまわないのだが、およそ精密コントロールには利き腕を使うであろうし、それ以外の手を使うということである。お好みにおうじて好きなようにしていただきたい。)をつき、体を支えながらどんどん前傾状態を作ってゆき、およそ対地角度45度程度になるまで体を傾けることである。こうすると本来の勃起角マイナス所の45度ということになり、放水角度をぎりぎり便器の許容範囲内に押さえることが出来る。もちろんホース折れ状態が発生しない限度まで砲心角度自体も下げなくてはいけないのは自明である。

 が、便器が和式大便器である場合は、あの金隠しをうまく使うことでぎりぎり他を汚すことの無いやり方が使える。和式便器では深くしゃがみ込むことで、腹部の角度自体が前傾になっている。さらにホース折れしないぎりぎりの所まで下向きにすると、金隠しの内壁まで放水口が下がることになる。この状態で用を足すと、ほぼ球形の金隠し部分の無い壁に沿って尿は反射も起こすことなくスムーズに便器内に流れていく。実に画期的ではあるが本来汚れないはずの金隠し最上部まで尿が付着するので掃除の際には、反省の念を込めながらていねいに抜かりなく行わなければならない。

 かほどに苦労の末排尿を済ますと程なく勃起状態は解除され、フレキシブルないかなる角度でも放水できそうな物ができ上がるというのはきわめてしゃくであるが、これも神の与えたもうた試練の一つであるのだろう。

 いまひとつ、男性のみが味わうであろう苦労というのはある。

 先に尿道粘膜の粘性が高くなる話をした。そして先端部が唇様であることも・・これらが複合し、そのミニチュア唇の真ん中がくっついた状態で、両サイドからあらぬ方向に二筋の放水ラインが出来てしまうことがある。

 これは床から立ち上がる細長い小便器の場合は砲心自体を回転ひねりを加えることで対処可能である。が、一番往生するのは大小兼用タイプの、便器との距離が相当にあり、かつ離れているがため見かけ上の目標範囲が狭くなっているタイプである。これでは如何にひねりを加えようとも2筋とも便器内に納めることは難しく、終了後泣く泣く床掃除をすることに相成ってしまう。で、大概こんな時は終了間際、つまりもう汚すだけ汚してしまった後に粘着状態が剥離し、健康な太い一筋のラインとなったりするのである。


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